
インゲヤード・ローマン
Conversations with Ingegerd Råman
Interview

“光を受け止め、影がどのように生まれるかを観察すること。それは私がずっと大切にしていることです。タイルであっても、奥行きの感覚を生み出すことができます。広い面に並べていくと、タイルのあいだにわずかな影が生まれるんですね。その影は明るさや暗さの違いとして現れて、光と影の静かな相互作用を生み出してくれるのです。”
陶芸とガラスを横断しながら制作を続けているインゲヤード・ローマン(Ingegerd Råman)は、光や影、そして作品の表面に宿る微細なニュアンスを長年にわたり探求してきました。過剰な装飾を排除し、時間の経過や光の移ろいの中でゆっくりと浮かび上がってくるような、繊細な変化に満ちています。
A.a. Dantoとのコラボレーションでは、ローマンはその感性をタイルのデザインへと展開した。「Da Capo」 と「Tile in Number」 の2つのコレクションは、その探求をさらに押し広げ、ローマンの手の余韻を残しながら、空間と響き合うタイルへと昇華されています。
陶芸やガラスの分野で広く知られているローマンさんの作品では、光や形、表面に起きる繊細な変化がとても重要な要素となっています。今回のタイルのデザインは、これまでの制作とどのように異なりましたか。
土は、私にとっていちばん身近な素材です。ろくろを挽いているので、手の感覚は身体で覚えています。ただ、陶芸とガラスの制作では手の使い方が異なるので、そのあいだを行き来しながら制作しています。
タイルのデザインは、実は私にとってまったく新しいことではありませんでした。振り返ると、30年前に描いたまま実現することなく眠っていたスケッチがありました。それが立体的なタイルでした。アイデアがとても気に入っていたので、ずっと大切にしてきました。もちろん、良いアイデアは古くなりません。今回のプロジェクトが始まったときに、そのアイデアに立ち返り、また新しいかたちで今回のシリーズを発展させることができました。
30年前にそのタイルのアイデアを最初に考えたとき、どのようなことに関心がありましたか。
光を受け止め、影がどのように生まれるかを観察すること。それは私がずっと大切にしていることです。タイルであっても、奥行きの感覚を生み出すことができます。広い面に並べていくと、タイルのあいだにわずかな影が生まれるんですね。その影は明るさや暗さの違いとして現れて、光と影の静かな相互作用を生み出してくれるのです。
同時に、タイルの壁がどのようにある種の静けさを保てるかにも関心があります。分かりやすく何かを表現する必要はないんです。ただそこに在るだけで、生き生きとした感覚を与えてくれれば良いかなと思います。
今回制作されたタイルは光の扱い方がとても印象的です。タイルをデザインしたときに、光についてどのように捉えていますか。
私は、装飾するというよりも、光や影、そしてごくわずかな変化やその気配を表現することが好きなんです。すべてがすぐに見える必要はありません。スウェーデンでは、白は白、黒は黒だと捉えられがちですが、実際にはその中にもたくさんのバリエーションがあります。そうした違いを見つけていくことに興味があるんですね。同じ要素を使いながらも、新しい見え方を探して、より注意深く見ること。それが私にとってひとつの挑戦でもあります。
それから、マットとグロスのバランスが今回とても重要な要素の一つでした。光沢のある表面は周りを映し込み、マットな表面は光を吸収します。この二つを組み合わせることで、表面に変化が生まれるんです。光の状態や時間帯、そして空間の中で人が動くことによって見え方が変わります。遠くから見るととても静かに感じられるかもしれませんが、近づくと生き生きとして見えてきます。一面の壁の中でも、部分ごとに微妙な違いが現れて、とても繊細ですが、その都度異なる表情を見せてくれます。
「Tile in Number」は手描きのスケッチから生まれて、その不規則性が特徴となっていると思います。このような揺らぎや「不完全さ」は、今回のコレクションにおいてどのような意味を持っていますか。
私は常に手を動かしていて、スケッチを描くときには手がふんわりと浮かんでいるような感覚で動いています。何かを正確に配置することよりも、どれくらいの余白が必要か、線の太さはどうあるべきか、周りとの関係の中でどう見えるか。そうした感覚のほうが大切だと考えています。私はそれを「正しい間違い」だと捉えています。コントロールしすぎず、自然な感覚が大切なんですよ。
「Da Capo」を提案したあと、フラットなタイルもデザインしてほしいという依頼があって、スケッチを描き始めました。模様を作りたくないという思いがあったので、少し躊躇しましたが、私はデザイナーとして自分なりの方法で向き合うべきだと思い直して、改めて自分に問いかけました。「自分ならどうするだろう」と。
最終的には同じ色を使いながら、マットとグロスでコントラストを出すというデザインに辿り着きました。釉薬はガラスのように光沢があり、周りを映し込みます。一方で、模様の部分はマットに仕上げています。この二つを組み合わせることで、新しい見方が生まれました。私の仕事では、構造と余白のバランスを大切にしています。反復の中にも、わずかな変化や小さな揺らぎがあること。それが作品をより人間的で、生きたものにしていくのだと思います。
A.a. Dantoとの対話や制作プロセスは、最終的なデザインにどのような影響を与えましたか。その中で、タイルという素材の可能性をどのように捉えていますか。
ダントーの工場だけでなく、その場所もとても印象的でした。水に囲まれた島の独特の空気の中で、土の匂いを感じることもできます。土はとても根源的な素材で、どの文化にも、どの土地にも存在してきたものです。土の感覚を通じて、昔から変わらずそこにあった大地の記憶のようなものに触れることができると考えていますが、今回はそれを肌で感じました。
コラボレーションのプロセスもとても良い時間でした。ダントーのみなさんと工場の中を歩きながら、技術的なことも感覚的なことも話し合うことができて、時間をかけて理解を深めていきました。
私にとって、やはり「時間」はとても重要な要素なんですね。現代の生活ではあらゆることに速さが求められていますが、時間をかけることの大切さについては、デザイナーとしてだけでなく、日々の暮らしの中でももっと語られるべきだと思います。時間をかけることで、より深く理解し、より良いものを作ることができる。そしてそれは、より長く続いていくものになる。A.a. Dantoは、長い歴史を持つダントーから生まれた新しいブランドです。長い年月のなかで培われた技術と土への眼差しを土台に、これからの時代へと受け継がれていくタイルを作り出していくと思います。









