クラーソン・コイヴィスト・ルーネ・アーキテクツ

コイヴィスト・ルーネ・アーキテクツは、1995年にマーティン・クラーソン、エーロ・コイヴィスト、オラ・ルーネの3名によってスウェーデン・ストックホルムに設立された建築設計事務所。建築設計事務所として出発し、現在では建築からデザインまで分野を横断するスタジオとして、国際的に高い評価を得ている。プロジェクトは、建築、ホテル、住宅、店舗、オフィス、展示空間から、キッチン、衛生陶器、テーブルウェア、ガラス、家具、テキスタイル、タイル、照明、エレクトロニクス、さらにはスウェーデンのテレビ賞「Kristallen」のトロフィーに至るまで、多岐にわたる。2021年には、スウェーデン国王カール16世グスタフより、建築における卓越した芸術的功績に対してプリンス・ユージン・メダル(2020年度)が授与された。

Conversations with Claesson Koivisto Rune Architects

Interview

Claesson Koivisto Rune Architects

“タイルは硬い素材ですが、このタイルの形とテクスチャーによってやわらかさが生まれます。まるでテキスタイルのようにも見え、部屋に温かく心地よい空気をもたらしてくれる。思わず靴も靴下も脱ぎたくなるような、心地よい空間を生み出すことができるでしょう。”

クラーソン・コイヴィスト・ルーネ・アーキテクツ(Claesson Koivisto Rune Architects)のデザインは、プロポーションの美しさとその明快さ、異なる要素がひとつの全体を成すときに生まれる調和への感覚に根ざしています。スケールを問わず、反復と構成がどのように空間体験を生み出すかを探求し続けています。

A.a. Dantoとのコラボレーションでは、このアプローチがタイルのデザインに展開されています。今回新しく発表する2つのタイルシリーズ「Soft」と「Cell」では、幾何学とモジュールにおける繊細な変化が、壁面の見え方と空間の印象に新たな広がりをもたらします。

インタビュー・文 Joyce Lam

建築、インテリア、家具、プロダクトと幅広い分野で活動されていますが、今回のA.a. Dantoとのコラボレーションでは、これまでのスタジオの実践とどのように結びついていますか。

(CKRA)

タイルは、私たちの普段の仕事の中でも非常に馴染みのある素材です。建築家でありプロダクトデザイナーでもある私たちにとって、タイルはその二つのジャンルが自然に交差するところにあるものだと考えています。プロダクトでありながら、その用途は建築的でもある。その意味で、物と空間のあいだで仕事をしてきた私たちのデザインのあり方と、深く通じるものがあります。
これまでにも他のタイルメーカーと仕事をしたことがありますし、プロジェクトの中でもタイルは頻繁に使ってきました。けれども、今回のような形でタイルのデザインに取り組むのは初めてで、これほど精緻なものづくりを行うメーカーとの協働も初めての経験でした。

今回のプロジェクトへのアプローチについて教えてください。どのようにデザイン作業を始めましたか。

(CKRA)

一般的なタイルは、精密で直線的な正方形の素材であることが多く、扱い方にはおのずと制約が生まれます。私たちは、タイルの表面に装飾を施すことよりも、タイルそのものに本来備わっている要素に注目しました。それが、タイルとタイルのあいだに生まれる目地です。

タイルを並べたときに、目地がひとつのパターンを形成するので、タイルとタイルのあいだの空間はタイル自体と同じくらい重要なものだと考えています。角をわずかに丸めるというデザインを加えることで、目地を変化させることができます。タイルが持つ精緻さを保ちながらも、硬さがやわらぐ。タイルが出合う部分にわずかな広がりが生まれ、視覚的にも触覚的にも異なる体験をもたらします。

さらに、実用的なメリットもあります。角がやわらかくなることで、施工がしやすくなります。また、ダントーのタイルは素地から色付けができるので、長い年月が経って多少の傷がついても、表面の美しさは損なわれません。もちろん、使い方の可能性も広がります。たとえば、ゆるやかな曲面にも柔軟にこのタイルを貼ることができます。

「Soft」と「Cell」の2つのシリーズは、アイボリー、テラコッタ、インディゴの3色で展開されています。このカラーパレットにはどのようなインスピレーションがあったのでしょうか。また、タイルが広い空間に使用されたとき、色は空間の雰囲気にどのように影響すると考えますか。

(CKRA)

色は空間の印象を大きく左右しますが、他の素材との関係のなかで考える必要があります。タイルだけで空間が成り立つことはほとんどなく、木や金属、テキスタイルなどと隣り合わせに存在するものです。今回のパレットは、さまざまな文脈に対応でき、空間にまとまりをもたらす色彩にしたいと考え、タイルの特徴と用途を深く理解しているA.a. Dantoと一緒に開発を進めました。
特に大切にしたのは、流行ではなく、時代を超えてなお落ち着きのある、主張しすぎない色をつくることです。アイボリーは温かみのあるニュートラルな色調。テラコッタは、多くの文化圏に通じる土の色合いを含んでいます。インディゴは、少し意外に感じられるかもしれませんが、水を連想するので、水回りの空間によく馴染む色だと考えて選びました。
私たちが目指したのは、ユニークでありながら普遍的でもある色、つまり異なる文化的背景のなかでも自然に溶け込むことのできる色でした。

クラーソン・コイヴィスト・ルーネ・アーキテクツの特徴の一つは、プロダクトと建築の関係性を大切にされているところにあると思いますが、今回のタイルでは、どのような空間的効果を意図されていましたか。

(CKRA)

ひとつは、タイルが広い面に使われたときにどのように見えるかということですね。写真で見ると、タイルの壁面はフラットに見えることがあると思いますが、実際にその場に立つと、目地や角、表面の微妙な変化が光と作用し合い、見る位置や動きに応じて表情が変わります。タイルは静的なものではなく、空間や身体に呼応するものだと考えています。
もうひとつは、連続性ですね。このタイルは屋内でも屋外でも使うことができるので、中と外の空間を繋ぐことができます。部屋の中から外部まで、同じタイルを延長して使用することによって空間がより広く、一体感のあるものに感じられるようになります。
タイルは硬い素材ですが、このタイルの形とテクスチャーによってやわらかさが生まれます。まるでテキスタイルのようにも見え、部屋に温かく心地よい空気をもたらしてくれる。思わず靴も靴下も脱ぎたくなるような、心地よい空間を生み出すことができるでしょう。

A.a. Dantoとの対話や制作のプロセスは、最終的なデザインにどのような影響を与えましたか。

(CKRA)

今回のプロジェクトは、1年以上にわたりやり取りを重ねた、非常に密度の高い協働のプロセスでした。形状や寸法、カーブの角度、色、表面の仕上げに至るまで、あらゆることを話し合いました。もちろん、デザインの意図と生産性は常にすり合わせなければなりません。製造が難しいアイデアがあると、形にするために細部の精度を詰めていく必要がありました。しかし、その対話こそがとても重要なのです。そうしたプロセスを経てはじめてデザインとして成立し、かつ製品として実現可能なものにたどり着くことができました。

今後、タイルは現代の建築やインテリアにおいてどのような可能性を持つと考えていますか。

(CKRA)

私たちはタイルを「誠実な」素材だと考えています。耐久性があり、長持ちし、美しく経年変化していく。その意味で、現代の建築に求められるあらゆる資質を備えています。特に、建築には長い寿命が求められるので、タイルはその価値をさらに高めることができるように感じます。

また、タイルが表面の仕上げ材という枠を超えて、空間を考えるための要素になれるのではないかと思っています。先ほどもお話ししましたが、形、構成、素材のあり方を通じて、タイルは空間の体験そのものを変えることができると考えています。

A.a. Dantoのタイルには、素材に真摯に向き合うこだわりが強く感じられます。素地まで同じ色で着色されているので、時間が経っても表面の色が剥げたりすることはありません。それは物理的にも視覚的にも、もうひとつの耐久性と言えるものではないでしょうか。建物が存在する限りタイルもともにそこに存在し続けることが可能です。だからこそ、耐久性を持ち合わせるタイルの未来には大きな可能性があると考えています。長い歴史を持つ素材であるだけでなく、建築のなかで進化し続けるポテンシャルを持っていると信じています。

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